東村山福音自由教会 ✞ Sunrise Chapel: ヨブ記6-8章「死を願うヨブ」
主が人の子らを、意味もなく、苦しめ悩ませることはない。(哀歌3:33)

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2023/01/20

ヨブ記6-8章「死を願うヨブ」

*** 1/18(水)祈祷会 説教概略 ***

ヨブ記6-8章「死を願うヨブ」

ヨブ記から教えられています。苦しい時、嘆き叫ぶことが一つの脱出の道、救済の道であると思います。実際、その苦しみを自分のうちに我慢して、一人で抱え込むことはかえって苦しみを増してしまうからです


多くを失い、悲しみのどん底にあったヨブを励まそうとした友人エリファズ。彼のことばは、確かに正論であり、時に真理なのですが、しかし、この時のヨブにはかえって苦しみを増してしまう追い打ちに思えました。愛のない正論、みこころに沿わない正論は、人を励ますどころか、主のみこころから離してしまうことさえあります。

ヨブは自分の苦しみを理解して欲しかったのであって、冷静に分析されたかったのではないのです。

特に、論理的な男性ほどやってしまいがちで、相手の苦しみを理解するよりも、分析し「こうしたらいいのではないか?」とかアドバイスを並べて立ててしまいます。私にも心当たりがあります。

ですから、ヨブは61-7節のところでは、苦しみのゆえに嘆くことは正当な権利であるかのように主張しています。

2節に「苦しみの重さが量られたらいいのに」とヨブは嘆いています。そして、量れるものならなんと「海の砂よりも重いだろう」3節で言います。それはそうですよね。一度に使用人、財産、子どもたちを失ったのですから・・・。全身悪性腫物に覆われる深刻な病気になっているのですから。何もかもを失ったのです。

「苦しみの重さが量られたらいいのに」それは、見えたらいいのに。分かりやすければいいのに・・・ということでしょう。これは本当にそう思いますね。残念ながらその人がどれほど大変なのか、どれほど重い物を抱えているのかは、数値化もデータ化もできるものではありません

グラフのように誰が見ても分かりやすければいいのにと思いますよね。「大変だ」「しんどい」ということばでは、伝えられない深刻さ、大変さがあるわけです。皆さんに心配をかけまいと、頑張って「大丈夫です」と言うこともありますよね。それが中々わかってもらえないのです。これが苦しみを増す一つの原因です。

友人にも分かってもらえず、かえって苦しむヨブの姿です。実に、そのヨブの姿が、かえって苦しむ者たちにとっての慰めになっているのは不思議です。

それは、ヨブが私たちの通る苦しみ、試練における「嘆きの代弁者」のように思えるからでしょう。私たちの嘆きや叫びを、私たちに代わって代弁してくれている。しかも、詩的な表現によって。そういう意味では、苦しみのただ中にいる人にとっては、ヨブ記は非常に大きな慰めとなる可能性を持っていると言えるでしょう。


さて、苦しみがひどすぎるので、ヨブは神様に向かって「死」を願うほどでした。7章に入りますが、15-16節にこうあります。
15節 私のたましいは窒息を、私のからだ(骨々)ではなく、死を選びます。
16節 もういやです。いつまでも生きたくありません。かまわないでください。私の日々は空しいものです。 

私のたましいは窒息を願う。そして、からだではなく死を選ぶと。「からだ」ということばには、脚注にあるように「骨」という意味もありますが、実は他にも「痛み」という意味もあります。そこには「苦しみながらこのからだで生きるよりも、いっそ死にたい」という願いがあるのでしょう。

そして16節はとても印象的です。新改訳聖書2017年版は、よくぞこのように訳して下さったと感じます。「もういやです。」と。シンプルながらも、ヨブの自暴自棄な思いがよく表現されています。そこには自分(のいのち)を拒むという意味が込められています(第三版の訳では「わたしは いのちを いといます」)。

そして、「いつまでも生きたくありません。」も、直訳的には「永遠に生きることなど望まない!」という意味です。これだとあまりにも冷静な感じがしてしまいます。ですから、本人の感情的になっていることばをよくくみ取った訳と感じます。「かまわないでください」は、「一人にしてくれ」ということです。本当に苦しい時、理解してもらえないぐらいなら、かえって苦しくなるので一人を望んでしまうということはありますね。

よく自殺願望がある人に対して、「死にたいなんて言っていけない」と励まそうとするケースがあります。しかし、おそらく逆効果なのでしょう。ヨブほどの信仰者でさえ「死にたい」と叫んでいるのですから。神様に死を願うしかないほど、苦しんでいるのですから。

しかし、むしろ、死を主に叫び求めることもまた、信仰なのだと言えるのではないかと、改めて考えさせられます。死を願うなど、もちろんしない方が良いのです。それでも、それしかない程に苦しんでいる。ヨブはこの苦痛、叫びを主の前で叫んでいるのです。悲しむにしても、神のみこころにそって悲しんでいるのです。教えられます。

17節でこう言っていますよね。「人とは何ものなのでしょう。あなたがこれを尊び、これに心を留められるとは。」 これは詩篇84節に登場する有名なことばと一致します。ヨブ記はダビデやソロモンらと同時代ではないかと考えられています。そして、詩篇とヨブ記では、同じような表現なのに意味することは反対のように見えます。ヨブは神様に愛され、尊ばれ、目を留められているがゆえに、今この凄まじい訓練のような苦しみを通らされていると思っているのです。詩篇では、こんなにも小さな罪深い者に目を留めてくださるなんて、なんとありがたいことかと恵みを見ています。ですが、ヨブ記では「かまわないでください」という状況です。ヨブはむしろ、神に目を留められているとは、試練が繰り返し来ることだと今は思えて仕方がないからです。 ただ、それでもその正直な思いを神様に向かって発していることは、どこかで深い信頼を持っているからだと思わされるのです。


18-21節。21節の最後も「もう私はいません」と、消え入りたいという思いを吐露しています。燃え尽き、落ち込んでしまったエリヤの心情もこれに似たものであったことでしょう。そして、このようなヨブの姿を見ていられない友人のことばが出てきます。

8では、ビルダデの答えがあります。2節にあるように、ヨブを諌めていますね。

2節 いつまで、あなたはこのようなことを語るのか。あなたが口にすることばは激しい風だ。 

ヨブのことばは激しい風「暴風」のようで、聞いていられないと感じたようです。確かに私たちは、人の嘆き叫びを聞くことが難しいでしょう。聞いているとこちらも苦しくなり、もっと前向きに考えましょうよ!と思ってしまう。ビルダデも聞いていられず、このように言ってしまったのでしょう。3節では、神様はさばきを曲げたりしないのだと続けます。つまり、嘆いても仕方がない。潔く、主のさばきを受け入れなさいということでしょう。

そして、5-6節をご覧ください。そこでは、この苦しみを受け入れ、主に立ち返れば、今すぐにでも神はあなたのために奮い立ち、義の住まいを回復されるだろうと「もっともらしいこと」を言います。13節でも、さも立派に見える教訓を語ります。すべて神を忘れる者の道はこのようだ。神を敬わない者の望みは消え失せる。 とどめは20節です。ヨブの誠実さを全否定するかのようなことばです。見よ。神は誠実な人を退けることはなく、悪を行う者の手を取ることはない。 これももう、その通りではあります。その通りなのです。でも、今のヨブにこのことばを言う必要はないのです。

 ヨブは必死に主に叫び、もがいて、この苦しみの中でどうにかしたいと必死なのです。これらのビルダデのことばは、しばしば私たち自身にも心当たりがあることでしょう。私たち自身が、死にたいと願ってずっと嘆いている人を見ていられないのです。そんなにウジウジしていないで、恵みを見つめましょう!良いこともある!と。

 ヘンリー・ナウェンの失敗談があります。ハリケーンで家を失った老婦人を励まそうとして、失敗したのです。途方に暮れる彼女に、あなたはまだマシな方ですと。家族がすぐに駆け付け、家を修理したり、色々助けたりしてくれている。もっと悲惨な人が多くいる。恵みを見ましょう!と彼は言いました。

 しかし、それはかえって彼女を傷つけてしまいました。悲しむべき時に悲しむチャンスをある意味奪ってしまったのです。自分の側に引き込むのではなく、彼女の苦しみに神様と一緒に寄り添うことが必要だったのです。

 それはキリストが、人の隣人となり、苦しみと一緒に担われた姿から学べます。 実に、人が苦しみを受け入れるのには時間が必要です。試練を受け止めるまでに必要なプロセスがあります。悲しむべき時には悲しみ、嘆くべき時には嘆く「グリーフワーク」が必要です。

 ですから、苦しむ人にヨブ記や詩篇を勧めるのはそういう意味があるでしょう。そこに私たちの代弁者がいます。神様に大いに嘆き叫んでいるのです。神のもとで悲しみ、苦しんでいます。聖書のすばらしい点の一つでしょう。

 当たり障りのない綺麗ごとが並べられた書ではないのです。人の魂のうめき声が聞こえてくるのです。そして、実に一番の代弁者はイエス・キリストです。キリストが隣に寄り添い、ともに痛んで下さいます。私たちは主の前に、ヨブのように叫びもがく者であって良いのです。みこころにそって悲しむ時、主の慰めが与えられます。



 
引用元聖書
<聖書 新改訳2017
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