また、牧師の働きの中でも、ことばでひどく傷ついたケース、反対に傷つけてしまったケースのご相談もたびたび受けて参りました。ことばは人を生かしもするし、殺しもする。神様がくださった尊い大切なものです。だからこそ、人を励まし支え生かすために用いていきたいですよね。
ヤコブの手紙3章は、少し耳に痛いメッセージが語られています。
(1)適切なことばを知らないゆえ(国語力、語彙力、敬語の使い方)
愛の心で語っているにも関わらず、用いることばがふさわしくないために、不遜な態度に見えたり、相手に不快な思いをさせたりしてしまう。誤解が生じやすい。語彙が少ないために、思っていることと、話したことについてギャップが生じやすい。
→ ことばを学ぶ 特に良いことばをしっかり身に着けること
(2)ことばを精査していない(発することばは、人格とも深い関係がある)
・感情的にことばを発してしまっている。
・ことば数が多いゆえに、失敗も多い。
・焦って言い訳。何か言わないといけないとの思いが強すぎる。
心や性格の課題 怒りっぽい、せっかち、劣等感&優越感
3.具体的方策
では、どうしたらいいのでしょうか。
(1)良いことば、やさしいことばを学ぶ
箴 15:1 柔らかな答えは憤りを鎮め、激しいことばは怒りをあおる。
柔らかな答え(ことば)と激しいことばとで、ま反対の反応が起こる。
(2)やさしい一言を添える(これを面倒くさがらないで)
①「いつもありがとうございます」「お心づかい感謝します」感謝を伝えつつ・・・
②「お手数をおかけしますが」「お忙しいことと思いますが」・・・よろしくお願いします。
③「お時間ある時で結構ですので」「ご都合の良い時にでも」・・・お読みください。
④ ねぎらいの一言:「お疲れ様でした」「ご労に感謝します」
こうした一言を添えることを学ぶだけで、相手への印象もかなり変わる。
ことばは使わないと身に着かない。普段から積み重ねる。
(3)ことばを剪定(精査)する(ことばを減らしていい)
これらを味わうと、必ずしもことばの人が神の前に正しいとは限らず、かえってその分罪を犯しやすくもあることが想像できると思います。話すのがあまり得意でない人にとっては、よく話せる人をうらやましく思える時もあるでしょう。しかし、ことば数が多ければ大切なことばが多いというわけではないのです。
むしろ、ことばは少なくてもいいでしょう。それよりも質を大事にする生き方の方が、私は豊かだと思います。良いことば、質のいいことば、愛のことば、やさしいことばを用いたいのです。そのために、焦ってことばを出さず、神様と相談しながら話すといいですよね。
(4)感謝やねぎらいのことばから始める
パウロの手紙は厳しい指導も多くある。しかし、いつも感謝から始めている。
ピリピ1:3 私は、あなたがたのことを思うたびに、私の神に感謝しています。1:4 あなたがたすべてのために祈るたびに、いつも喜びをもって祈り、1:5 あなたがたが最初の日から今日まで、福音を伝えることにともに携わってきたことを感謝しています。
読者の存在を喜び、また良いところはほめながら始めている。
私も最近は、若手の牧師や神学生などの教育係のようなことを頼まれている。ただ、彼らもいい大人。だから頭ごなしの指導では、プライドが傷つくし、前向きに受け取ることが難しい。だから、まず良いところを話し、肯定しつつ、課題を伝えていくようにしています。特にその人の課題について話す場合も、「こうしたら、もっと良くなると思いませんか」と提案するように話すなど、工夫をしています。肯定的アプローチで話すように。
(5)肯定的なことば
あなた主体ではなく、私主体で話す方が相手の心を穏やかにする。
「~していただけると、(私は)とても嬉しい(助かる、幸いです)」
ほめていただいた時・・・ 「いえいえ、私なんてダメです」ではなく、「そんな風に言っていただけて嬉しいです(恐縮です)」
「足りない者ではありますが、そのように言っていただきありがとうございます」
断る場合も「無理です」「できません」ではなく、「ちょっと今の私には難しそうです」という方が優しい返答になるでしょう。
(6)内側を神様に取り扱っていただく・・・ことばは人格が現れる。
キリストを受け入れ、神の御霊によって内側から変えられていくこと。
これは言うなれば、「対処療法」ではなく、「根治療法」。ことばは、結局は私たちの脳内で考えていること、普段心の中で使っているものが出て来る。ある程度は対処療法で改善できても、内側の人格が変えられていかないと、根本的には変わらない部分がある。
キリストに心を治めていただいて、語るべきことを祈り求めながら語ること。
終わりに
多くのことばはいらない。それよりも丁寧な愛のこもった一言。小さなことばを大事にしていく時に、人生は豊かなものになる。
箴言16:24 親切なことばは蜂蜜。たましいに甘く、骨を健やかにする。
伝道者の書9:17 知恵のある者の静かなことばは、愚かな者の間での支配者の叫びよりもよく聞かれる。
伝道者の書10:12 知恵のある者が口にすることばは恵み深く、愚かな者の唇は自分自身を呑み込む。
(コロサイ4:6) あなたがたのことばが、いつも親切で、塩味の効いたものであるようにしなさい。そうすれば、一人ひとりにどのように答えたらよいかが分かります。
(エペソ4:25) ですから、あなたがたは偽りを捨て、それぞれ隣人に対して真実を語りなさい。私たちは互いに、からだの一部分なのです。